« ネパールの旅 第12話:旧き良き街 | トップページ | ネパールの旅 第14話:完結編 »

ネパールの旅 第13話:ダルバートつくろうず!

147

バクタプルを出るときには、天候は何やら怪しくなってきた。

148

ナガルコットに到着。今回の旅、最後の宿は5つ星ホテル「クラブ・ヒマラヤ」だ。

149

素敵なプールとジャクージもある。

150_4

我々が今回予約できた部屋は、ホテル随一の眺めの良い部屋だ。

151

天気さえよければ、心安らぐ田園風景だけでなく、エベレストも見えるのだが…。明日は晴れることを祈ろう。

152

なお、部屋にはヒマラヤ山脈を構成する山々の名前が付けられている。僕の泊まる部屋には「フィッシュテイル(マチャプチャレ)」という名前が、女性陣の泊まる部屋には「アンナプルナ」という名前がついている。

153_3

もう少しゆっくりホテルを満喫したいのだが、最後の夕食は僕とビザエ君を中心に、みんなで作ることになっているのだ。その会場へ急がないと、いつまでも料理が出来上がらないのだ。

154

会場となるのは、別のホテルの離れの庭。石でカマドを組んで火を起こし、食材の準備を始めた。…しかし、恐れていたことが現実になってしまった。つまり、雨が降ってきた。

155

ホテルの離れのキッチンで、下準備の続き。鶏肉のメニューだけは変更し、しかし料理は続く。ホテルの料理人の勧めで、ここにある暖炉の火で料理をすることにした。ガスで作るよりずっと美味しくなるとのことだ。僕はインド料理は作れるが、ネパール料理は初めて。ビザエ君のアドバイスにひたすら従うことにした。
今回、ニンニクとショウガは石臼で潰している。この方法が一番美味しくなるという。ポカラからの帰りに買っておいた黒目豆はビザエ君があらかじめ水に浸しておいてくれた。コリアンダーリーフは、ざく切りにする。「根は毒があるから捨てる」とのこと。からし菜は、手でちぎった方が美味しい。本来は直火焼きのシェクワにする予定だった鶏肉は一羽丸ごとをぶつ切りにしたもの。カレーにすることにした。カリフラワーは軸に切り込みを入れると味がしみ込みやすい。

156

ビザエ君は何をやっても器用だ。僕の忘れていた料理の基本を色々思い出させてくれる。気づけば、下ごしらえの半分くらいは彼にやってもらっていた。

157

暖炉の火を起こすのは、ビザエ君の甥。
そして、料理が始まった。マスタードオイルをたっぷり両手鍋に取り、カルダモンとクローブを入れて火を吹き、強火にする。煙がもうもうと上がってからさらに2分。ベンガル料理でもマスタードオイルを使うときには煙を上げるほどの高温にするが、ここネパールでも同じである。油のクセが取れるのだ。そしてスライスしたタマネギを入れる。「ねぇビザエ、日本のタマネギはどう思う?」「今は慣れたけど、味がしない。初めて食べたとき『うわぁ~、何じゃこりゃ』ってなった」インドと同じく、ネパールでも紫で小型のタマネギを使う。油に投入したときの香りが、もう料理が美味しくなることを約束してくれるようだ。タマネギがしっかり色づいてきたら、たっぷりのニンニク・ショウガペーストを入れる。タマネギを周囲によけ、底にたまった油の中に入れるのがコツだ。いい香りがしてきたら、鶏肉1羽分をすべて投入。じっくり炒めていく。ビザエ君だけでなく、ホテルの料理人も監督してくれて、食材を入れるタイミングを教えてくれる。それにしても、煙突があるとはいえ室内。煙が目に染みる。
鶏肉がすっかり色づいたら、ターメリックパウダー。インド料理より多くを使う。そしてコリアンダーパウダー、唐辛子粉、最後に肉料理用のマサラ。…と、ここで、次に入れるトマトを切り忘れていた。鍋をいったん火から下ろし、慌ててトマトをざく切りにする。そして、料理再開。
バタバタしながらも、まず、チキンカレー…インド人ならチキンマサラと呼びそうな、汁気の少ないもの…が出来た。みんなで試食してみる。
…うまい!
「ネパール人でもこんなに美味しくできないよ」とビザエ君。お世辞だろうが、嬉しい。
大量にできたので、すでに腹が減っている皆でつまみながらビールを飲み、残りの料理を作っていく。チキンマサラに続いて、アルブリタマ(アル:ジャガイモ、ブリ:黒目豆、タマ:発酵させたタケノコ。これらを煮たスープ)を作る。本来黒目豆は3日間水に浸ける必要があるのだが、今回1日しか浸けておけなかったという。そのため、長めに煮ることになった。
まずはマスタードオイルをカンカンに熱した後、乾燥唐辛子の種とフェヌグリークを入れ、焦がす。そして、タマネギの前にジャガイモだ。塩を手のひら半分ほど加える。続いてタマネギ、ニンニク・ショウガペーストに火を通したら、タマ、水に浸した黒目豆を投入し、パウダースパイスを入れてよく馴染ませ、水をたっぷり。暖炉の火では、水を入れても鍋の温度が大きくは下がらない。少し火を弱め、豆が固いので1時間半煮込む。タマの発酵具合が軽く、酸味が弱いので、酢を加えた。

158_3

そんな折、お客さんが2人来た。みんなでチキンマサラをつまみながらの酒盛り。つまみは他にもグンドゥルック(干し野菜。ここでは戻してマサラやトマトで和えたものを用意)もムラ・コ・アチャールもあるぞ!さらに次の料理で使う、ホテルの料理人が揚げておいてくれたジャガイモとカリフラワーの一部も。アルブリタマが煮あがるまでの間、大いに飲み、笑った。ちなみに、真ん中の人は有名人なのだ。後ほど紹介しよう。お二人にもチキンマサラは好評であった。

さてクイズ。この中にネパール人は何人いるでしょう。

159

お客さんは先に帰ったが、料理は続く。引き続き、アルゴビマサラ(ゴビ:カリフラワー。ジャガイモとカリフラワーをマサラで炒めたもの)、サーグ(青菜。ここではからし菜のニンニク炒めを作った)を作り、いよいよ全品が完成した。

160

そう、僕はポカラでビザエ君とサシ飲みしたときに、今日作る料理について相談して「せっかくだから、ダルバートを作りたい!」とリクエストしたのだった。左のお皿は下半分にご飯。8時方向から時計回りにグンドゥルック、アルゴビマサラ、サーグ、チキンマサラ、真ん中にムラ・コ・アチャール。右上のスープ皿にはアルブリタマ。自分で作った…というよりみんなで作ったダルバート、この旅一番の味となったのだった。ただ、酒盛りの後だったのでたくさんは食べられず、料理のほとんどは貴重な場所を提供してくれた料理人の皆様にまかないとして配られたのであった。

161

食べている途中。真ん中に写っているのはジャンマラクルサニ(殺人唐辛子)。これを齧りながらだと、たくさん食べられる。唐辛子の辛さを消すのはご飯が一番なのだ。

162

旅を締めくくるのに相応しいほど楽しすぎる宴も終わり、ネパールでの宿泊も今日が最後。明日の朝、エベレストが見られればこの旅は完璧なものになる。雨は上がったが未だに曇っている夜空でも、ナガルコットでは満天の星だった。

|

« ネパールの旅 第12話:旧き良き街 | トップページ | ネパールの旅 第14話:完結編 »

旅行とか」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ネパールの旅 第13話:ダルバートつくろうず!:

« ネパールの旅 第12話:旧き良き街 | トップページ | ネパールの旅 第14話:完結編 »