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「変身」(フランツ・カフカ)

Kafka

夏休みと言えば読書感想文。何冊か、久々に書いてみます。

まずはフランツ・カフカの作品で一番有名だと思われる「変身」。劇団「ナイロン100℃」の演目「世田谷カフカ」でも、直接扱われた題材ではないにもかかわらず、「それでいつ虫になるの?」というセリフが何度も出てきたってくらい。

まああんまりにも有名な作品なのでバラしてしまうと、お話は主人公のグレーゴル・ザムザが朝起きたら虫になっているところから始まります。

カフカは生前、この本の表紙に昆虫などの絵が使われることを強く拒否していたそうです。「鎧のように堅い背とアーチのように膨らんだ褐色の腹、ひどくか細いたくさんの足をもった」その姿、たしかに具体的に絵や映像になってしまうとこの作品の魅力がひどく失われてしまうことは、読んでいるとよく分かります。この物語は、まさに文学でしか成し得ない表現なのです。

カフカは主人公が変身した醜悪な姿の虫を、そのものとしてではなくて、比喩として描いています。だからなのか、主人公グレーゴルの変身した姿を誰も不審に思わず、変身した理由についてもまったく描かれません。

カフカは虫になった主人公を自分自身のメタファーとして、自信の父との関わりを描写したともいわれています。しかしながら、書かれてからおよそ100年経った現代においてもこの物語は非常にリアルに感じられます。

たとえば、何らかの理由でひきこもりになってしまった少年は現実世界でのグレーゴル・ザムザかもしれません。

もしくは、不慮の事故や病気で脳に深刻なダメージを負い、植物人間になってしまった人に、外界からは認識しようのない意識が残っているとしたら、その意識は現実世界でのグレーゴル・ザムザかもしれません。

突然リストラに遭って職を失ってしまったお父さんは、現実世界でのグレーゴル・ザムザかもしれません。

虫は、人間社会に存在する色々な人を象徴しているのです。虫という姿を借りることで、ある日突然所属する社会から切り離されてしまった人たちの絶望を、誰にでも感じさせるのです。

1時間もあれば読み終わる短編ですので、是非手に取ってみてください。

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