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とんかつの異端児

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以前mixiでアップして友人達から反響があった記事をリライトして掲載します。
幸い今日は暇なので、このタイミングじゃないと無理なので。
なお、当記事は2009年6月10日の訪問時のレビューです。ここは割と変化が大きいので、現在とは違う可能性がある事を念頭に置いて下さいね。では本文へ。


とある筋では有名なとんかつ店、上野「平兵衛(へいべえ)」に行ってきました。

変わり者の親父さんがやっているのだが、なんと創業85年だそうな。ネットでの評価は非常に分かれていて、食べログでは賛否両論の「否」が勝っている感じ。ブログでは、好きな人は結構ハマっている感じ。いつも参考にしているレストランレビューサイトドダン・ブーファンのポトフのレビューではこんな感じです。デイリーポータルZでも1回レビューが書かれております。こんな感じ

お店の公式サイトで揚げ方を解説しています。
もう一つの公式サイトでは親父さんの日記が連載中。

前置きが長くなりましたが、いよいよレビューに入ります。


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上野駅から歩いて5分くらい。かなりボロめの、よく言えば味のある外観のお店です。

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親父さんのこだわり、その1

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親父さんのこだわり、その2

店内は大概のレビューで指摘されているように、汚いです。カウンターはところどころ色が剥げているが、一応綺麗に拭いてあります。厨房は黒い油汚れがかなり付着している。座敷の方は掃除道具などが置いてあって物置状態なので、使用不可能。正統派の旨いお店でそういうところは知りませんが、「めっちゃ旨い訳ではないのについつい通っちゃう、隠れた名店」にはこういう汚いお店はありますね。
店頭の看板、ホームページなどでの挑発的態度や幾つかのレビューとは裏腹に、金髪の某綾小路さん風な親父さんは気さくな感じで、愛想が良い方です。ちょっと辛口レビューになりますが、ごめんなさい。新参ブロガーが書いた記事には大した影響力はないと思いますので、好きに書かせて頂きます。


とんかつ定食を頼み、親父さんが揚げる様子をじっくり観察。20分以上かかりましたが、まったく見ていて飽きませんでした。その異端の揚げ方を紹介していきます。長いので、「です・ます調」は一旦中止。

1.ラードが入った2つの鍋がある。左側のほうは何やら泡が表面に広がっている。他店のとんかつを「真っ黒に酸化した油で肉を乾燥させたとんかス」と呼んでいるこの店だが、自分のところのラードもごま油のように黒いぞ。
2.肉を取り出す。噂にたがわず、厚さ5cm近くの凄まじく分厚いロース肉。この店は他の老舗同様、脂身を切り落としたロース肉のみを使用している。んで、そいつに衣を付けていく。卵→パン粉→卵→パン粉と2度づけした。パン粉をつけるたびに手で表面を叩いている。
3.右側の方の鍋に肉をポチョンと投入。この時点では油は少なく、衣を付けた肉は完全には沈んでいない。最初は低温揚げだと思われる。噂通り、ジューッという音はしないし、泡も出ない。
4.しばらくして、肉の周りから細かい泡が出てくる。親父さんはしばらくその場を離れて、ぬか漬けを席に置いたりお茶を入れたりしている。そのあと、オタマで油をチャプチャプと掻き混ぜ始めた。この動作が非常に謎だ!
5.泡はどんどん勢いを増していく。おそらくどこかで火を強めて、高温揚げに切り替えたはずだ。親父さんは振りザルで泡の表面をボフボフ叩き始める。これまた謎の動作!
6.左の鍋から油を掬って、右の鍋に移す。おそらくこれで油の温度を下げたのだろう。泡は半分くらいに減少する。それを振りザルで掬って捨てる親父さん。再びしばらくオタマで油を掻き混ぜ、この時点でごはんと味噌汁を配る。
7.舞台の幕開けのように「はい、大変長らくお待たせしました」というと、箸でとんかつをせっせと前後に、なべ底に擦り付ける様に動かし始める。しばらくこの動作を行い、箸と指先でとんかつを取り出し、切る。包丁が衣に触れた時に、べつにザクッという音はしない。1回切るごとに刃についた油の量を観察しているみたいだ。そしてついに出てきたのが…。


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これです。

ネットのレビューでは「ピカタみたい」とか「衣がフニャッとしている」というのが多かったですが、思ったよりカリッとしています(ところにより、確かにフニャッともしている)。細かいパン粉の衣を二度付けしているせいか、密度が濃い感じ。ところどころ厚いところがガリッとしています。串カツのお店でもたまにこういう感じの衣を見かけます。ははぁ、この作りで肉汁を逃がさないようにしている訳だ。

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とんかつの断面。しっかり火が通っており、低温揚げとは違う。肉と衣の間から盛大に肉汁が流出する。

このとんかつは恐らく、低温→高温→低温というプロセスで揚げられていると思います。たしかに肉汁は油には逃げていません。しかし肉からは流出しており、肉と衣の間に溜まっているようです。まず右端から一切れ、何もつけずに食べてみます。肉は…端の一切れは筋が多かったです。あとのところはそうではないですが、全体的に固くはないもののパサついた食べ味。あまり上等な肉を使っていないせいもあってか旨味は薄いです。肉部分より衣の方がおかずになる感じ。ソースは合わなかったので、ケチャップや粒マスタードで食べました。ケチャップのみで食べるのが一番よかったですね。

ご飯は、辛口なレビューの幾つかに反してちゃんと炊けています。親父さんの日記などを読む限り結構ネットでの評判を気にされている風なので、改良したのかな。豆腐とネギとなめこのみそ汁もまあまあ。ぬか漬けはよく漬かっていますが、ぬか臭くはない程度だし、個人的には長めに漬けたのは好き。キャベツは中々いいのを使っていると思います。水にさらしていないのもあり、旨みと甘味が濃くて旨い。トマトも完熟で旨い。


以降、分析です。ここでも「です・ます調」はお休み。

繰り返すが、ここの揚げ方は恐らく低温→高温→低温というプロセスを経ている。低温揚げの利点は肉を柔らかく仕上げられることなのだが、この店の方法では、中盤の高温のところで肉にかなり火が入ってしまう。衣が黒っぽくなったり肉が固くなったりするほどの長時間ではないが…。結果、肉は肉汁を放出し、パサパサになる。しかし、肉汁は高温揚げの段階でしっかり固まった衣にガードされ、肉と衣の間に溜まっていく。最後の低温揚げの意味は不明。肉に余計に火を通しているようにしか思えないが…。

肉汁を揚げ油の中にさえ逃がさなければ、その肉はジューシーで旨みがあるのかというと、それは違う。肉自体から肉汁が抜けてしまえば、それは油の中に逃げようが肉と衣の間に留まろうが同じこと。
さらに肉と衣の間で、肉汁は衣が吸った油に薄められており、結果「水っぽい」と評される味になる。「ここの料理はとんかつではなくコンフィ(肉を100度前後の低温の油で煮る仏料理の技法)」という人もいるが、高温で揚げるパートがあるので的外れ。
で、「せっかく」肉と衣の間に溜まった肉汁は切って盛りつけた段階でかなり流れ出てしまう。結局旨味の薄い、固くはないがジューシーでもないとんかつになってしまう訳である。


非常に興味深いとんかつですが、味の絶対値としては「不味くはないが特別美味しい訳でもない」程度。2300円はちょっと高いです。もっと美味しくて安いお店もあります。しかし体験としてはとても面白かったです。色々(心とかお金とか)余裕のある方一度お試しになってはいかがでしょう?

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親父さんのこだわり、その3。ご自由にお持ち下さい、とのこと。

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高温でジューッと揚げないから揚げ油が劣化せず繰り返し使えるのだそうだ。この店の揚げ方なら何でも脂っこくなく美味しく揚げられるのだそうだ。このブックレット目当てで行くにはちょっと高いけど、色々書いてあって楽しいです。ホームページ同様、論理的なような破綻しているような文章が素敵。

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